【Power BI】Adobeの"ガチ"ダッシュボードをリバースエンジニアリングしてみる-その2-
前回に続いてAdobeのダッシュボードを解読していきます。今回は、Adobeの考えるカスタマージャーニーに沿ったKPIを表示している部分(下図4番)とジャーニーの各フェーズにフォーカスしたページが中心となります。
前回記事はこちらです。
4.カスタマージャーニーに沿ったKPI
再掲ですがAdobeの考えるカスタマージャーニーは、「Discover」「Try」「Buy」「Use」「Renew」の5つのフェーズで考えているとのことです。このジャーニーは「DDOM(Data-Driven Operating Model)」と呼ばれる考えの元作られており、全社員に共有されているそうです。下記の記事にあるように、要するに全社員が共通のデータの見方を出来るようにすることで、顧客に首尾一貫した体験をしてもらおうという意志が込められています。
Discover
ここからは各ジャーニー毎の詳細ページも存在しているようなので、Twitter等で見つけられた範囲で併せて解読していきます。まず「Discover」について、サマリーページのメイン指標には「Traffic」と記載されています。恐らくこれはAdobeのアクセス解析ツールであるAdobe Analyticsで取得したサイトへの流入数を表していると思います。
「Discover」に関する詳細ページと思われる画像を見つけたので、詳しく見てみると「ALL Traffic」「A.com UQFM Conversion Rate」「Paid Media Spend - Discover」「Paid Media Sourced UQFMs」の4つの棒ブラフを確認できます。(上部と下部が切れている画像しかなかったので、これ以外もあるかもしれません)
マイクロソフトのPower BIを利用して、Experience Cloudのデータを見ることができます。#AdobeSummit pic.twitter.com/ZvC1XmJtFS
— Kazuki Kasahara (@KazukiKasahara) 2019年3月26日
「ALL Traffic」は恐らくAdobeのサイトへのトラフィックを表しているのではないかと思います。次の「A.com UQFM Conversion Rate」は、「UQFM」という単語を調べてもそれらしいものがヒットしなかったので分かりません。。知っている方がいらっしゃいましたら教えてください。
「Paid Media Spend - Discover」は、直訳すると「発見のための有料メディアの支出」、つまり広告からの流入もしくは広告のインプレッションを表しているのではないでしょうか。「Paid Media Sourced UQFMs」も同じく「UQFM」が分からず、解読を断念しています。
▲「UQFM」について調べて出てきたそれっぽいのは、上記資料のみ。イギリスで行われたAdobe MAXの登壇者?のブログで発見しました。(http://blog.adci.it/2017/11/)
Try
次は「Try」ですが、ここは非常に情報が少ないです。サマリーページのメイン指標は「New QFMs」となっており、またもQFMの壁に阻まれています。詳細ページの画像も見つからずほぼ情報なしです。
Buy
続いて「Buy」フェーズですが、メイン指標は「Gross A.com Conversion」となっています。A.comはAdobe.comのことだと思うので、Webサイトで獲得した成果、すなわちWebでの契約を表しているのではないかと思います。注目したいのがその表記が%となっている部分。金額ではなく割合表記となっているのは、狙ったことに対する成功率で評価しているのでしょうか。ここら辺も画像だけでは深くは分かりませんね。
こちらは詳細ページが見つかったので、詳しく見てみると構成は下図のような感じに。
フィルターはサマリーページと同様。2の部分には「PM Spend - Buy」とありますが、これは「Discover」と同様に「Paid Media Spend - Buy」と考えられ、購買への直結を狙った広告費(セール情報など)だと思われます。広告関連の指標を初めに持ってくる辺り、広告と親和性の高いソリューションを数多く販売しているだけあり、広告の費用対効果を常に重視している姿勢が感じられます。
3の部分では「Marketing Sourced ARR」 「Gross A.com Conversion」「D2P Conversion」「F2P Conversion」という4つの指標が掲載されており、「Marketing Sourced ARR」はマーケティング活動によって契約に至った金額を表していると思われます。「D2P Conversion」「F2P Conversion」に関して、「D2P」は聞きなれない言葉で分かりませんが、「F2P」は「Free to Play」すなわち無料体験版からのコンバージョンを表しているのではと推測できます。
4は営業よりの数字で、「Gross New ARR」と「Gross New Subs」の2つの指標が存在していて、上部についたフィルターで「Web」「Reseller」「Phone」の3つの販売経路別にも数字が見られるようになっています。
5は、1〜4の指標を週別に棒グラフで表したものとなっています。
Here are all the dashboards for various customer journey stages (Missing the try stage) what @Adobe uses #AdobeSummit #MarTech #marketing pic.twitter.com/F0tbb3H5b2
— Rohit #DigitalTransformation #MarTech (@rohitprabhakar) 2019年3月26日
Use
「Use」のメイン指標は、「Repeat Paid User MAU」。 サブスクリプション契約をしている人の中で実際に使用している人のことを表していると思われます。こちらも割合で表現されていますが、確かに人数で表現するよりも理にかなっていると思いました。実際の人数を把握するよりも、割合の増減が分かる方がアクション(減っているならフォローするなど)に繋げやすいという意図がある気がします。
こちらも詳細ページの画像がTwitterに上がっていました。基本的な構成は「Buy」フェーズのページと同じですが、2〜4の指標の内容が大きく異なってます。2の部分は「CEI」とだけ記載されており、下の棒グラフのタイトルを見る限り「Customer Engagement Index」の略なのですが、意味は不明です。
3の部分は大きく「Cumulative Paid Members」と「Cohorts」の2つに分かれており、それぞれアクティブな利用者の割合と、コホート分析(ユーザーの時間経過ごとの定着率をみる分析)用の指標が掲載されているようです。この部分の詳細は、正直よく分からないです。
そして4は「In -Product NPS」と記載されています。「NPS」を調べてみると「ネットプロモータースコア」の略とのことで、要はユーザーからの商品に対する評価の値なのだと思います。「Renew」に繋がる「Use」フェーズの大事な指標と頭では分かりますが、そこをしっかり見てい改善していこうとダッシュボードに入れているのは流石だと思います。
Renew
最後に「Renew」を見ていきます。「Renew」のみサマリーページで2つの指標が表示されており、それぞれ「QTR UI Rate」と「QTR FP Rate」となっていました。「QTR」は「Quarter」を意と推測出来ますが、「UI」と「FP」は何の略なのか全く推測できませんでした。
詳細ページの基本構成は、「Buy」「Use」らと変わらずで、指標の内容が変化するのみとなっています。指標は、大きくはAdobeが直接販売しているダイレクトセールスと、卸先であるリセラーの2つの軸で見ているようです。ただし、こちらにも「UI」や「FP」を始めとした不明単語が出てきており、あまり解読できませんでしたので、項目だけ載せておきます。
▲「Renew」詳細ページの基本構成
▲3と4の詳細項目
その他気になった点
これで一通りTwitterで見つけられる範囲の解読は終わりとなります。ただ詳細な画像は見つけられませんでしたが、サマリーページとジャーニー毎の詳細ページの他に「Roadmap」という名前のページがあるようで、その内容が気になっています。何かご存知の方がいらっしゃいましたら教えて頂きたいです!
以上、Adobe Summitで公開されたAdobeの"ガチ"ダッシュボードを解読してみたシリーズでした。今回調べた内容を参考にしながら、どういった指標を見るべきなのか、どういった見せ方にするべきなのかを普段の業務でも追求していこうと思います。
戦術や分析に関して、こういう見方もあるよ、こうして見た方がいいよ、などご意見等ありましたら、コメントで教えていただけると幸いです。ぜひよろしくお願いいたします!