サッカーを通じて観戦力と分析力を上げていくブログ

基本的にはサッカー×データに関して試してみたことをまとめています。最近はもっぱらPythonを使った可視化中心。時々自分の好きなガジェットも。

【18/19 PL Chelsea vs Man United】ジョルジーニョへのマンマークの意図を考えてみる

ここ1週間ほどで「モダンサッカーの教科書」や「footballista」の最新号を読んだことで、ポジショナルプレーに興味津々です。ポジショナルプレーという戦術?スタイル?思想?について少しインプットできたところで、それを体現しているチェルシーの戦い方を観てみようと思い立ち、普段は決して観ないであろうユナイテッドとの試合を観戦してみました。

ところがどっこい、マタにジョルジーニョマンマークさせることで、ほとんど効果的な役割をさせず。相手の長所を消すことに長けたモウリーニョが、なぜジョルジーニョへのマンマークを選択したのか、今回はその意図を考えてみたいと思います。

 

ポジショナルプレーとジョルジーニョの役割 

考察する前に、ポジショナルプレーについてここまでのインプットを整理したいと思います。現段階での個人的な解釈は、「攻守問わず優位性を生み出すポジションを取り続けることで、試合を支配しようとするサッカー」です。ここでいう優位性とは、位置的優位(相手DFライン間や、相手の背後でボールを受けた状態)、質的優位(ドリブルの旨さやヘディングでの強さなど個人能力による優位)、そして数的優位の3つがあり、ボールを回し及びポジショニングの修正を絶えず行うことでこれらの優位性を生み出すことを上位の目的とします。

チェルシーのサッカーをこのように捉えた時、ジョルジーニョは位置的優位を作り出すキーマンとなります。いくつかのプレー集を拝見しましたが、ジョルジーニョは空間把握能力に長けており、スペースにポジショニングする動きやスペースを作り出す動きを得意としています。これはポジショナルプレーの基本でもあるのですが、

1.ジョルジーニョがスペースに顔を出してパスをもらう

2.相手は寄せに来る

3.空間把握能力に優れたジョルジーニョは既にパスコースを見つけており、1タッチ2タッチで味方にパス

4.相手がジョルジーニョに寄せたことで生まれたスペースに味方はポジションをとる

というプレーを繰り返し、位置的優位(フリーで受けられるスペースや相手DFに迷いを生じさせるスペース)を作りやすくしていきます。また、相手DFラインを1つ超える縦パスを上手く入れる印象もあります。

 

ジョルジーニョへのマンマークの意図を考える

既に記載しているようにこの試合でモウリーニョは、マタにジョルジーニョマンマークさせる戦術を取ってきました。この点を含めモウリーニョの狙いは、「アザールを自由にさせない、そのために中盤3人に自由を与えないようにする」ことではないかと思います。まずはチェルシーのビルドアップ時の状況を振り返ってみます。

マタがジョルジーニョマンマークし、チェルシーの両CB・GKからのパスを徹底的に塞いでいるのは明らかでした。しかしそれだけではなく、コバチッチとコンテのインサイドMFに対しても、ユナイテッドの2列目のラインが目を光らせており、ボールを簡単に受けさせないような状況を作り出していました。さらに、CFのルカクは両CBからセンターへ向けたパスをケアしていました。

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ルカク同様に、ジョルジーニョをマークしているマタもセンターへの縦パスはケアしていた気がします

中盤3人(ジョルジーニョコバチッチ、コンテ)へのプレッシャーは強かった一方で、CBとSBへのプレッシャーはかなり弱かった(というよりほぼ無かった)気がします。こうした状況下で行われたビルドアップは主に4つありました。①SBへのパス、②自分でドリブルで持ち上がる(主にダビド・ルイス)、③裏へのロングボール、④ボールを貰いに降りてきた両WG及びCFへのパスの4つです。

チェルシーの攻撃で一番脅威なのが、強力な攻撃陣に優位な状況でボールを持たれることを考えると、①②はDF選手の攻撃で脅威が少なく、③はユナイテッドが相対的に強い空中戦勝負、④は脅威となる選手をゴールから遠ざけることとなり、全てチェルシーの強みを消しています。この試合ではジョルジーニョを中心とした小気味良いパス回しが影を潜めていました。

位置的優位を作らせないゾーンディフェンス

マタを中心に相手中盤3人を自由にさせないことでチェルシーの攻撃の威力を弱めていたと思われるのですが、観ていて気になった点がもう1つありました。それは、ユナイテッドのDFライン間の距離が狭いことです。恐らくここにもう一つ、モウリーニョ監督の狙いがあるのではないかと思います。

前述の通りポジショナルプレーが、優位性を生み出そうとするサッカーであることを考えると、チェルシーにとって優位な状況の1つにアザールがDFライン間でボールを保持している状況があります。現在絶好調なアザールは、ドリブルでの突破やモラタ、ウィリアンとのコンビネーションで決定的なチャンスを生み出せる選手です。ライン間の距離を狭めることでスペースを消し、ゾーンに来たボール保持者に対しては激しく取りに行くことを徹底していたように感じます。現に前述の④ボールを貰いに降りてきた両WG及びCFへのパスを選択した際に、ユナイテッドのDFラインはそれに釣られて上がることはなく、ゾーンをコンパクトに保っていました。

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▲ゾーン内では激しくプレッシャーをかけ、マークの受け渡しはあまり行われていない(=ボールが離れるまでついて行く)ようでした。

こうした守備重視の戦略を取ってきた(と思われる)ユナイテッドですが、反面攻撃はシンプルだったと思います。両サイド(ラッシュフォードとマルシャル)の速さ、センターの強さ(ルカクとポグバ)、そしてマタの上手さというほぼ個人能力頼みでのカウンター中心とした攻撃でした。(この戦術から考えると先制されたのはかなり痛いはずですが、それでも逆転し、ほぼ勝利を掴みかけるところまで来ていたのは何か理由・狙いがあったのかも知れません。)

 

今回はポジショナルプレーを見てみるはずが、その対抗策に注目することになりました。今回のポイントとしては、優位性を作り出す上でキーとなる選手(ジョルジーニョアザール)が自由にプレー出来ないようにすることなのだと思います(当たり前。。)。ここから逆にポジショナルプレーを志向するチームは、複数の引き出しを持っておく必要があるとも言えそうです。

戦術や分析に関して、こういう見方もあるよ、こうして見た方がいいよ、などご意見等ありましたら、コメントで教えていただけると幸いです。ぜひよろしくお願いいたします!